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エッセイ

吉田好美先生の60周年記念コンサート、そして芦屋ルナホールにおけるブライアン・ルイス先生のヴァイオリンリサイタルとグループレッスン〜東海地区からのメッセージ

コンサートのチラシ(クリックで拡大) 東海地区ヴァイオリン科指導者の吉田先生の記念コンサート、実は10年前の50周年コンサートにも、私は足を運んだのですが、前回に比べてさらに盛大に行なわれました。
 と言いますのは、吉田先生門下生で現役の東海地区の先生方が集結し、祝福の演奏及び感謝の言葉を一人ひとりが一言ずつ述べられたのです。参加されたのは、末廣悦子、大澤美木、平子まり、野田豊子、早川雅子の各先生に、賛助として吉田先生と同じ名古屋中央支部に属し、長年交流のあるチェロ科の廣岡直城先生でした。
 第1部で吉田クラス生徒の独奏。第2部で門下生による演奏とトーク。第3部で吉田クラスOBによる演奏。そして第4部で吉田クラス生徒・門下生・OB全員が一体となってドッペルコンチェルトの第1楽章、ヴィヴァルディのa-moll第1楽章、ゴセックのガヴォット、鈴木先生のアレグロ、キラキラ星変奏曲など教則本のプログラムによる斉奏でした。 

エピソードの宝庫、さすが60周年です。


 私にとって一番印象に残り、記念コンサート聴きに行って良かったと感じたのは、第2部の門下生、現役先生による吉田好美先生にまつわるエピソードでした。
 大澤先生が司会を務められ、各先生からお話を引き出してみえました。

 末廣先生は60年ほど前に吉田先生が教室を開かれた頃の夏に、三重県で海水浴に連れて行ってもらったそうで、帰り道に泳ぎ疲れたのか歩けなくなった時に、吉田先生が末廣先生の前にしゃがんで、「悦ちゃん背中に乗りなさい」 と言われて、末廣先生を駅までオンブしてくれた忘れられない想い出があります、と語られました。

 野田先生は、吉田先生に習っていた時に先生とドッペルをよく演奏したけど、「吉田先生はいつもテンポがものすごく速くてついて行けなかったです」と語ってみえました。

 大澤先生の妹、平子先生はわずか1歳半で吉田教室に入られたのですが、レッスンの最中でも気が乗らないと床に座り込んでしまい、天井を見上げていたそうです。そんな時、吉田先生は「まりちゃん、天井にはコワーイお化けがいて、ちゃんとお稽古しないと降りて来るんダヨ」と言われて、スクッと立ち上がってヴァイオリンを弾き始めたそうです。もっともご本人は全然覚えていないそうですが…。

 大澤先生は、「吉田先生に長年習っていましたが、一度も怒った吉田先生を見たことがありません…」 と語られましたが、その時、ほかの先生方も一様に頷いてみえました。

 それにしても、吉田先生の教師生活60年はとてつもない凄い記録です。
 鈴木先生が松本高等音楽院(後の才能教育研究会)を立ち上げられたのが、今から66年前の1946年(昭和21年)ですから、まさにスズキ・メソードが日本で産声をあげた直後に教室を開いて、子どもたちにヴァイオリンを教え始めてみえたのですから、驚嘆以外の何物でもありません。
 数多い鈴木先生の門下生の中でも稀有な存在ではないでしょうか…。プログラムに豊田先生が次のようなお祝いのメッセージを寄せられていました。
 「指導歴60年、心からお悦び申し上げます。我々の場合、父親の時代からのお付き合いで音楽の出会いはもとより、呼吸の仕方、考え方も似ているのではないでしょうか。第2次世界大戦下に育った人間として、生命の意味合いが現代の人々とは些か異なるような気が致します。『生きる』よりも『生かされる』という気持ちの方が強いのではないでしょうか。松本で同じ頃、鈴木鎮一先生のもとで勉強しながら過ごした日々が懐かしく思い出されます。次の世代に生まれて来る子どもたちへの思いもひとしお、才能教育運動に生命を賭けられ、ここに貴い60年という年輪ができ上がりました。どうかこれからも健康にご留意くださり、まだまだ後進のためにご指導いただきたいものです。」
 吉田先生は80歳代のご高齢で、豊田先生からみれば指導者としては先輩格になるのですネ。

いずれにしても吉田好美先生は親子二代(お父様は余伍仁三郎先生)にわたって、鈴木先生の才能教育運動に携われ、東海地区の偉大な指導者の一人として素晴らしい足跡を残されつつあると思っています。

確かな技量と心が現れていたブライアン先生のリサイタル


素晴らしい音色に会場は幸せな気持ちに包まれました 続いて、7月23日(月)、芦屋ルナ・ホールでのブライアン・ルイス先生のリサイタルおよびグループレッスンについて書きます。
 まず最初のヴェラチーニのソナタ第1・2楽章に、感動のあまり目頭が熱くなりました。特に第1楽章のあの透明な澄みきった音。そして物悲しい旋律。まさに心の中が洗われるような素晴らしい演奏でした。
 そして2曲目がブラームスの第2番のソナタ。1番、3番と比べるとどこか瞑想的で幽玄的な作品です。オイストラフやメニューヒンで慣れ親しんだ私の耳には、決してヴィルトーゾ的ではなく、ルイス先生は極めて端正な演奏を展開されました。(巨匠とまではいかないまでも、ルイス先生も大家の先生なんです)
 3曲目はモーツァルトの変ロ長調のソナタK.454よりアレグロ。繊細、優美な音色でルイス先生のこのモーツァルトの音は、ドイツ的よりもイタリア的な明るさが感じられました。
 4曲目はべネットの「ヘクサポーダ」~「ジッターロプテラの5つの習作」。べネットはアメリカの作曲家・編曲家でミュージカル映画「オクラホマ」 でアカデミー作曲賞を受賞しています。初めて聴く曲で、とにかくミュージカル的なメロディで、ハイポジが随所に散りばめられており、ルイス先生の技巧テクニックが視覚的にも目立ち、終わりがどこなのか、まったく予見できね奇怪な曲でした…。
 5曲目はスークのヴァイオリンとピアノのための4つの小品。スークの作品は叙情的な名作が多いですネ。息子のヨゼフ・スークのリサイタルを24年前に名古屋で聴きましたが、最も好きなヴァイオリニストの一人です。ルイス先生もたっぷりと心を込めて演奏されました。その音にルイス先生の心そのものが現れているようでした。
 6曲目がクライスラーの「ポリチネッラ」。初めて耳にしましたが、クライスラーの他のヴァイオリン作品とやはり曲想が似ていて親しみやすい曲でした。
 最後がコープランの「ロデオ」より「ホウダウン」。バレエ音楽をヴァイオリン用に編曲したのですが、フィナーレを飾るのに相応しいプログラムでした。

 リサイタルの後、第2部でグループレッスンが行なわれました。レッスン曲目は、指導曲集1・2巻より、ユーモレスク。ヴィヴァルデイのa-moll第3楽章、カントリーダンス、エックレスの第1・2楽章、そしてメンコン第3楽章でした。
 「キラキラ星」から始まり、小さな子どもたちもルイス先生のユーモアたっぶりの楽しいレッスンを嬉しそうな表情をして受けていました。
 どの曲もルイス先生の変わった(型やぶりの)アイデア溢れる教え方に改めて驚きました。
 子どもたちに楽しく演奏させる術をルイス先生は常に持ち合わせているように思えました。


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