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エッセイ

「スズキの音」が凝縮されていた、山本眞嗣先生 メモリアルコンサート

クリックで拡大 2014年8月10日(日)、渋谷区文化総合センター大和田4F さくらホールで開かれた「山本眞嗣先生メモリアルコンサート」は、心に残る素晴らしいコンサートでした。スズキ・メソード関東地区ヴァイオリン科指導者として、数多くの生徒さんを育てられた山本眞嗣先生が亡くなられて2年が経つこの時期に、かつての教え子とゆかりのあるOB・OGたちによって開かれたこのコンサートは、かねてよりとても楽しみにしていました。
 八面六臂の活躍をされた事務局長の藤瀬公美子さんとは、室内楽愛好家で作るAPA(エイパ:アマチュア演奏家協会)のメンバー同士で、この春にはドホナーニの弦楽四重奏曲第2番でご一緒させていただきましたし、コンサートマスターには、はるばるドイツから井手上康さんが駆けつけられると聞き、以前、スズキ・メソードの季刊誌で「先輩、こんにちは」にご登場いただき、しかもドイツのご自宅にも後に伺わせていただいたこともありました。さらには、3年ぶりに開催された夏期学校で、素晴らしい指揮を魅せてくださった井崎正浩さんの指揮ですので、これはぜひとも行かねば、と思った次第です。

生き生きとした、心躍る演奏



開演に先立ち、チェロパートの皆さんによるステージでのコンサートも素晴らしいものでした。 この日のプログラムは、
・モーツァルト:ディヴェルティメント ヘ長調 KV.138
・林光:弦楽のためのアレグロ(1954)
・バルトーク:ルーマニア民族舞曲 Sz.56
・チャイコフスキー:弦楽セレナードハ長調 作品48
 軽快に登場された井崎正浩さんの指揮で、冒頭のモーツァルトは、まさにディヴェルティメント。歓びに爆発しそうな演奏で、こちらまでウキウキとさせてくれます。2曲目の林光の「弦楽のためのアレグロ」は、光の帯が綾なす中を低音群の強いリズムが際立つ演奏でした。続く「ルーマニア民族舞曲」は、ヴァイオリンソロでも演奏されますが、弦楽合奏の豊かさを随所に感じることのできる演奏で、コンサートマスターを務められた堀内(旧姓遠藤)真実さんのソロも美しく、大きな拍手を送らせていただきました。
 そして、いよいよチャイコフスキーの弦セレのコンサートマスターに、井手上康さんが登場。音楽はこんなにもしなやかで、パワフルで、幸せにするものかということを実感させる名演でした。井崎さんの奏者のチカラを十二分に引きだすタクト、さらには井手上さんのダイナミックなリードで、メンバーがこの日のために培ってきた練習と思いが凝縮したような演奏となったのです。高音群の高い音楽性と確かさはもちろんですが、低音群のしっかりとした土台づくりには、特に感心させられました。もちろん中音域の支え方も聴き応えがありました。ロシア音楽の高い構築性をしっかりと表現され、緩急自在、「うーん、すごいなぁ」というのが実感です。

スズキの仲間なればこそ!



 かつて山本眞嗣先生は、1983年、85年、88年の3回にわたり、スズキ・メソードの生徒によるDDR(旧東ドイツ)演奏旅行の引率と指導を行なわれました。89年の第4回には、「スズキ・メソード ストリングオーケストラ東京」が結成されるほどにまでなりました。山本眞嗣先生の願いは「世界中の子どもたちとアンサンブル」を目標に、読譜やアンサンブル能力の発展にご尽力されたのです。かつての仲間たちが山本先生の音楽葬(2012年8月)で、時の壁を越え、たった一度の合わせで見事なハーモニーを届けたことにチカラを得たメンバーたちは、井崎先生を発起人としたメモリアルコンサート事務局を創設。以来、1年5ヵ月の奔走を経て、この日を迎えたのでした。事務局長を務められた藤瀬さんは「中心スタッフとして、山本眞嗣先生クラス3名(私含め)、岡本和子先生クラス1名、寺田義彦先生クラス1名の混合チームで、まさに山本弦楽合奏団を長年引っ張ってきたクラスで、首尾よくチームワーク良く、フットワークよく対応した結果、このような当日を迎えることができました」と話していました。まさに、スズキの仲間たちの結束力の強さを感じますし、共感した指導者の先生方も、夏期学校直後にも関わらず、多くの方が舞台で集結され、そして客席からもエールを送られていました。
中央に井崎先生、左が事務局長の藤瀬さん コンサート前日に、ドイツから駆けつけた井手上さんは、「前日の練習は、場所が狭かったこともありますが、みんなの熱が詰まり切っていて、音が溢れていました。そのくらい全員の気持ちが一つになっていましたね。こうして本番が終わって、改めて感じたのは、この年月にみんなが何もして来なかったわけではなく、それぞれの経験を今日、惜しみなく発揮したということ。無駄に生きていたわけじゃないということです。一段と音に磨きがかかっていました。井崎先生がGPに着ていらした『今日中に本気を出す』というTシャツも印象的でしたね」と語ってくださいました。
客席の山本眞嗣先生の奥様へ感謝の花束を渡される井手上康さん(左) コンサート最後に、山本眞嗣先生の奥様へ花束をお渡しになるために、舞台から奥様のお席まで運ばれる姿も心に残りました。
 アンコールは、芥川也寸志の「トリプティーク」から子守唄を叙情たっぷりに聴かせた後で、アンダーソンの「フィドル・ファドル」。陽気なヴァイオリンの妙技に天国の山本眞嗣先生もさぞかしお喜びでいらしたことでしょう。この日、松本から駆けつけて聴かせていただいた甲斐がありました。
中央に井崎先生、左は山本先生の奥様、井崎先生の右は山本先生のご子息の恭久さんです、 両脇は、山本先生を父のように慕っていた弟子の斉藤夫妻です。 OB・OG会としては、事前のPRに協力させていただきました。また、9月5日のOB・OG会第7回コンサートのチラシも、コンサート当日の午前中、挟み込みをさせていただきました。この場を借りて、お礼を申し上げます。
(OB・OG会広報担当:新 巳喜男)

追伸:
その後、主催者側からYouTubeでコンサート風景が配信されております。ぜひご覧ください。
・チャイコフスキー:弦楽セレナードハ長調 作品48→こちら
・林光:弦楽のためのアレグロ(1954)→こちら


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