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エッセイ

ありがとう。Steve Jobs!

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 Appleの製品に触れたことのある方は、それらがもたらす喜びが、プロダクトデザインとしての完成された美しさと磨き上げられた使い勝手にあることをよくご存知でしょう。その基本となる概念は無駄を排した徹底的なシンプルさです。これ以上ないというほど簡略された仕組みは、慣れてしまえば人間の動きにぴたっとフィットするものばかり。Windowsのこてこてマウスに比べてMacのマウスのシンプルさ、携帯電話のあのボタンの数を嫌ってタッチパネルを採用したiPhoneの美しさに、それは顕著です。
 クラシック音楽(ばかりではありませんが)を楽しむ私たちは、Appleの創業者であり、現代のダヴィンチとも評されるSteve Jobsがもたらした製品やシステムから数多くの恩恵を与えられました。特にインターネットを使った音楽配信システムであるiTunesは、社会全体を根底から変革させました。それまでのCD一辺倒の世界をダウンロードという概念でブレークスルーし、音楽著作権の非常に高い難易度のバリアもクリア。音楽の世界は、よりパーソナルに、そして共有する世界へと飛躍しました。ポケットに何千曲ものコレクションを持ち歩けることのすごさは、大変なものです。オーケストラにのめり込んでいたときは、交響曲をかたっぱしから入れていましたし、最近はカルテットやクインテット、トリオなど室内楽のオンパレード。大好きなカセットを入れ替えながら聴いていたウォークマンが遥か彼方、何万光年も昔のようです。
 彼のプロダクトの基本は、いつも「驚き」でした。誰も考えられなかったハード、ソフト、システムを世に送り出しました。用意周到に準備された目の覚めるようなプレゼンテーションで、必ず最後に付け加えられて来た”one more thing"に聴衆は期待したものです。それだけに、最後の最後まで驚かされました。衆議院議員の初公判のニュースに飽き飽きする中で何気なく見たAppleのサイト。10月6日の朝11:00頃です。そこにあったのが、Steve Jobsのこちらをまっすぐ見据えた写真と1955-2011だけのシンプルさ。8月に「ついにその時がやって来た」と言いながらCEOの席を降りた本人の訃報だったのです。かつて創り出して来た製品群と同じ、それはSteveらしい「驚き」のトップページでした。
 2011年末には、公式の自伝が出版されるはずと言われていました。おそらく全世界から届けられたメッセージが最後のページを飾るかもしれません。彼が心血を注いだ製品を今日も使いながら、哀悼の意を注ぎたいと思います。「Toy Story」や「Wall・e」など、彼が創り出したピクサーのアニメももう一度見ることにします。

スズキ・メソードOB・OG会 新 巳喜男


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